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第5回 「子供の姿はおとなの鏡 環境が作り出す価値観」

 散歩に行った時、Mちゃんが、うっかりドブの中に片足をつっこんでしまいました。 保母がMちゃんのクツを脱がせてふいてやっているのを見て、Tくんは言いました。
 「ねえ、早く行こうよ。そんなのいいじゃないか!」

Mちゃんがかわいそうにと思って見ていた子どもたちは、Tくんの言葉にびっくりしています。 わたしも怒るというよりもむしろ悲しみが吹きあげてきたのでした。

運動会でスタートラインに並んだN子ちゃん。「ヨーイ・ドン」とビストルが嗚ったとたん、 隣りのKくんの胸のあたりに腕をぐっと伸ばして妨害しておいてから、白分が走り出したのでした。

足の遅いAくんと同じ赤組になったSくん。ボール競争に負けるとAくんにつめよるのでした。
「おいAくん! おまえのせいだぞ。どうしてくれるんだ!」

こうした子どもたちを、どう扱ったらよいのでしょうか。「そんなこといったらかわいそうでしょ。あやまりなさい」とか、「N子ちゃんのやったことどう思う?」 とクラスの子どもたちに聞き「いけないことだ」とみんなに言わせる。-そんな言葉だけで、本物のやさしさや正義感、 倫理観といったものが育つのでしょうか。わたしはとても疑問だと思うのです。

これまで扱ってきた子どもたちを見てますと、子どもたちの価値観や倫理観といったものは、子どもがひとりで築いたものではなく、 両親とのふれ合いや、それまでの生育歴などの環境条件に大きく左右されていることがわかります。

また保育園の場合は、子どもの起きている大半の時間をここで過ごすことになるので、保育者の影響も見のがせないものがあります。 つまり、ひとりひとりの子どもが良い価値観を持って成長していくためには、親はもちろんのこと、わたしたち保育肴も含めた周囲のおとなたちが真剣に生きていなければいけないということなのです。

子どもたちの判断は自己中心的、断片的、結果論的になりやすいものです。けんかを見ていればわかるのですが、ことの発端や経過は無視して、泣いているほうに味方したり、好きな友だちを助けたりしている。そこのところをよく見きわめて 、わたしたちおとながうまく導いてやらなければなりません。

わたしたち保育者はどんな小さなできごとも見のがさずに、あるときは感動し、あるときは激怒し、またあるときは、ほのぼのとした 心あたたまる子どもの行為を讃えたりすることによって、子どもたちに無言のうちに価値観を教えていかなければならないのでしょう。

つまり、子どものかたわらにいるわたしたちおとなの生き方が、知らず知らずのうちに子どもたちの価値観を育てているのです。
おとなの価値観は、そのまますぐに子どもたちの中にしみこんでいくものです。子どもたちを叱るまえに、われわれおとなたちが、自分の生き方をふり返ってみる必要がありそうです。

本吉園子先生からのメッセージ(全7回)