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第2回 「何十年前のコマ回し、体験の大切さ」

 コマ回しに熱中する子どもたち、やはり男の子に多い。毎日コマ以外のことをしないので、「明日からコマを園に持ってこないように...」と話した翌日。
 なんと子どもたちは、木片や発泡スチロール、紙などでコマを作っている。「そんなにコマって面白い?」と聞くと年長児はもちろん、なんと、やっとひもをまけるようになった3才児までが、「すごーく面白い」という。「トオル君だけ2番のマルの中で回せたんだよ」テラスのコンクリートの上に直径3?位の1番のマルから直径50?位のマルまで、16のマルが描かれている。トオル君は今日、2番の直径6?位のマルの中にコマを入れて回せたのだという。ユウヤ君は3時間近くやり続け、とうとうケン玉のお皿の上にコマが入って回り、シンちゃんは、下駄箱の上靴を入れる上段に挑戦して、やっと昨日コマを水平に投げ入れて、回ったのだと、話し始めた子ども達。洗面器やバケツの中、椅子やじゅうたん、すのこの上、砂場の中・・、回っているコマを、ひもでさっとすくって、手のひらの上に乗せてまわしたり、ジャンパーの袖の中、帽子の中、サンダルや箱の中・・・、子どもたちにとっては、毎日がより困難度の高いものへの挑戦だったのだ、面白くて面白くてたまらないのは無理もない。
 何十年も前の、私の失敗の経験である。以後コマ回しが始まると心ゆくまで見守ることにした。

 「ぼく、千回まわす」「ぼくは、五百回」・・などと話しているのを聞いていたケンちゃんは、まだ幼くて千回がどんな数かもちろんわからないが、クラスの友だちや先生がやっているコマ回しを、自分もやり始めた。
 1回まわすとB5の紙に大きく1と記入する、2回、3回、3まで書くと紙の余白はもうない。裏に4・5・6、そして「先生もう一枚紙ちょうだい」、それが3日目、4日目と、少しずつ字が小さくなり、一週間目ぐらいになると、フリーハンドで紙に碁盤の目のように線を引き、数字を書き込んでいく。数字も9までは書けたが、10回をどう書いてよいか、わからない。教わって10を書けたが、11を書く時は、さらりと101と、書いている。そこで11と教えられて、19から20、しかし21は201、ここでも再度数えられて、21をなんとか突破。そして29、30、ケンちゃんは31を少し考えてさっと「31」と書くことが、できた。「やったね!」保育者はこういう場は絶対見逃してはならない、思わず抱き合って感動を伝える。こうして100回、101もクリアー。
 「先生、ぼくもう300回だよ」「えっ!」コマ回しはもちろん、他の運動面でも目立たず、他の友達のするのを見て、後からついて行くタイプのケンちゃんが、500回をこえた時、組中の子ども達から驚きの声が上がった。数字を書きこんでいた紙も2?位の厚さになっていた。ひもを巻く手つきも投げ方も堂に入ったもの、そして800回、始めてから2ヶ月半、とうとうケンちゃんは、1000回のコマを回し続けたのだ。
 この頃のケンちゃんは、広告のチラシなど、目にふれる印刷物の数字を見て「1000」は誰にも教えてもらわずに書けたのです。

 その頃、隣ではカツミ君が縦横20?角の厚い板で椅子を作り始め、足には割り箸をセロテープで苦労してつけて出来上ったが、勿論腰をかけたら潰れてしまい、園舎の裏から、4?角、長さ1m80?の角材を持ってきて無造作に切り、釘で打ち付けて仕上げたが、脚の長さがバラバラ。長い方を切ると又片方が長い、何回も脚を切るが揃わないことに気付き釘抜きで全部の釘をとり、長さを揃えて線をひき、あらためて鋸で切って四本の足を打ちつけて、出来上がったのは、やり始めて実に8時間後であった。ジャンパーを脱ぎ、セーターも脱ぎ、それでも汗びっしょり、1月の大寒の最中であった。
 「先生、ぼくね、いっぱあーい失敗したでしょ、だからできた時、こんなにうれしいんだよね」
 カツミ君の爽やかなこの言葉を私は生涯忘れることはない。

本吉園子先生からのメッセージ(全7回)